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心身に溜まった世の中の嫌な毒をデトックスしましょう。


by jinsei-detox

お蔦の恨みはどこへ行った?

 先日、本当に久々に国立劇場に歌舞伎を観に行った。演目は河竹黙阿弥の「新皿屋敷月雨暈」。四幕六場の通し狂言である。通称お蔦殺し魚屋宗五郎というらしい。本来怪談ものを新しく改作したもので人気作品だという。チラシにはそういう紹介文が記されているが、僕にいわせればこんな中途半端な芝居をよく作ったものだと思うのだ。
 というのも魚屋の宗五郎という男の妹のお蔦が旗本磯部主計之助に妾奉公しているのだが、悪い家来の陰謀にあり、不義密通の嫌疑を受け、拷問の上、殿様に切られ殺されてしまう。お蔦は死に際に「この恨みはらさでか」と四谷怪談のお岩さんでなじみの台詞を投げ、井戸の中に落ちていく。ここからはもう怪談もののストーりーが展開されないわけがないはずなのに、舞台の展開は兄貴がお蔦の死を知って、禁酒していた酒を再び飲み始め、酔っぱらって旗本の殿様の家に恨み言を吐きに行くのだ。それで簡単に言うと殿様がわしが悪かったと手をついて謝ってめでたしめでたしというわけ。
 おかしいよ、この話。昔、尾上菊五郎が黙阿弥に酒乱の役をやってみたいので作らせたものらしい。河竹黙阿弥といえば幕末から明治初期にかけての人気作家であり、有名な舞台では、知らざあ言って聞かせやしょうで有名な「三人吉三」。河内山宗俊で有名な「天衣粉上野初花」などの作品があり、当時の歌舞伎界では大御所的な存在だったという。でもなあ、歌舞伎というのはああいうものでよかったのかもしれない。もともと作家ありきではなく、役者が中心のものだったわけで、何度も何度も演じなおしで舞台が残ってきたものだからだ。
 とにかく三味線や下座の音曲を久々に聞いて、江戸人の粋を感じてきたのであった。
 で劇場はというと六分程度の入り。中年のおばさんたちだけという寂しさがありました。団十郎や海老蔵など若い人に人気役者がでないとこういうとなのです。
by jinsei-detox | 2009-03-24 20:48