心身に溜まった世の中の嫌な毒をデトックスしましょう。


by jinsei-detox

<   2007年 12月 ( 1 )   > この月の画像一覧

ふうっとため息をついて本を閉じた。とうとう読んでしまったのだ。
僕はずっと60を過ぎるまでは読まないと決めていたのだが、無性に読みたくなってしまったのだ。もちろん藤沢周平や浅田次郎などの江戸ものの先駆者である山本周五郎を読まないことに何の意味もない。それどころか長島茂雄を知らないジャイアンツファンみたいで時代劇ファンとしては片手落ちに匹敵することは十分知っていた。でも僕は読まないほうがいいと思っていた。当然はまるだろし、酔ってしまうのが目に見えていたので、避けていたのだ。友達とお酒を飲みあいながら「周五郎はいいよなあ」っていうふうになりたくなかったのだ。
でも堪えきれずに読んでしまったのだ。かの名作「樅の木は残った」を。もちろん簡単な言葉では言い表せない感動があった。
ここまで書いて郷里の友人と飲もうということで出かけたのだったが、(実は親父の法要で長岡に来ている)飲んでいると画材屋をやっている彼が不思議なことを言い出したのだ。
「実は俺、小説なんか読む男らねえけど、最近さ、山本周五郎を読んでたまらんかったいや。すげえ男らねえ。周五郎って」
まったくなんということだ。遇然というか奇遇というか開いた口が塞がらないとはこのことだった。しかも「すげえなあ周五郎って、人間をきっちと描けるもんなあ」と言い合うことになった。
僕は「樅の木は残った」の話をし、彼は「季節のない町」という小説を聞かせてくれた。
 それにしてもそうなるんだなやっぱり。相手が予想もしていなかった友人だったから余計おかしかった。
  僕たちは店を出ると彼が描いたフレスコ画を彼のアトリエまで見に行った。すばらしい絵だった。正直感動した。雪の降る師走の街を僕は楽しい気持ちで実家に帰った。
[PR]
by jinsei-detox | 2007-12-31 12:05