人気ブログランキング |

心身に溜まった世の中の嫌な毒をデトックスしましょう。


by jinsei-detox

風立ちぬ2回目は少し落ち着いて考えられた

 実は土曜日に息子2人と「風立ちぬ」をまた観に行ってしまった。息子たちの感想を聞いてみた。
 どうだった?
 面白かったよ。
 100点満点でいうと何点?
 80点かな?
 マイナス20点はどういうところ?
 ジブリのアニメを観に来たつもりなのにジブリらしくなかったところが不満だな。
 ふたりともそんな感想だった。
 なるほど……
 僕も2回目でようやくあの映画のすばらしさと疑問点が整理された。
 僕があの映画をもう一度観たいという気持ちになったのは、たぶん大正末期から昭和の初め頃に
流れている日本の人々の時間と風景に浸りたいという気持ちをあの映像は抱かせてくれたのだと思う。
 宮崎駿が描く自然の風景はアニメであればこそ味わえる表現なのだ。その時間は見ているだけで幸福にさせてくれたものだ。堀辰雄の小説をモデルにした男女の結びつきも当時のモラルや品格を彷彿とさせ、あの頃の恋愛の豊かさを羨むべきものとして享受された。もちろん一般大衆の男女でもそれなりの節度と恥じらいが文化の底にあればこそ豊かな結びつきとしてあったはずだ。ここの描かれ方にたいして僕は深く頷いたのだと思う。
 しかし2回目を観て、あるいは息子たちの反応を見ておやっと考え直すものが生まれたのも確かだ。
 つまり物語の主人公は零戦と設計した実在の人物である堀越次郎さんなのだ。彼は飛行機に憧れ、その道を実現するためにまっしぐらに生きてきた男として描かれている。
 問題はここなのかもしれない。彼は映画の中ではまったく葛藤しないのだ。ひたすら素晴らしい飛行機を作ろうと努力して、戦争と飛行機という相矛盾した制作物への葛藤もないし、恋愛した菜穂子さんが結核で死の淵にいようとも、仕事を辞めてその傍にいるという時間も頭にないほど葛藤の表現はないのである。
 たぶんそこがこの作品に違和感的なものを感じさせるのではないだろうか。まったくの架空の国のある飛行機好きの男が主人公であれば従来のジブリ特有の作品になっただろうけど、ここが日本の歴史をさかのぼらせる時代の男が主人公であれば、その時代的背景とかかわる言葉が生まれてきてもよおさそうなはずだ。そこが伝説的な飛行機を作った男の物語と単純におもしろがられない要素なのだろう。
 宮崎駿がどこかでその時代を生きた男を反戦的な表現をとるようにはできなかったといっているのを間接的に読んだことがあるが,確かに生な歴史を生きているときは時代にしっかりと包まれて生きているのであるから後世の人間が現在の価値観でとやかく言うことは出来ないというのは同意する。しかし、歴史上の実在を主人公にするのであれば何らかの形でその突きつける作品的な問題には対抗せざるを得ないのではなかったか。
 そうそこがジブリらしからぬ映画と感じたところの所以だったのだろう……
 息子たち曰。従来の作品は誰でもガわかるテーマをアニメをして、その具体性とその意表をついてデザイン性で圧倒的な説得力で物語ったのったが、「風立ちぬ」は誰しもが理解できる社会的コンテキストがないところでの物語だったのではというようなことを言っていた。なるほどね、そうかもしれないな。

 余談になるが映画のエンディングのユーミンの「ひこうき雲」の歌は映画にとても合っていて素敵なのだが
改めて歌詞を聴いていると誰の歌なのかわからない。僕はあの歌を聴きながら歌われている人はだれなのだろうと首をひねったものだが、あれはずいぶん昔作られた歌なんだってね。歌のテーマがあの作品のテーマとダブらないわけだよ。

 
by jinsei-detox | 2013-08-11 12:16 | 文化