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心身に溜まった世の中の嫌な毒をデトックスしましょう。


by jinsei-detox

長生きの代償が認知症への道だったとは

最近アルツハイマー・認知症についていろいろ調べることがあった。認知症八〇〇万人の時代になったと言われる。
健康状態は別にして人間の寿命が長くなってきたからだ。長生きは人類の夢であった。
しかし、長生きの代償が認知症ということなら、これは悲劇か喜劇か。

そんな関心もあってか深沢七郎の「姥捨山考」が読みたくなってきたのだった。日本の姥捨て伝説に題材をとった小説だ。
学生時代に読んだ記憶があるが、そのすごさはよく感じられなかった。ところが今読み返してみるとこれは小説というより
厳かな神話だと思った。甲州の山奥の貧しい村の農民の話で、主人公のおりんという老女が共同体の掟に従って
姥捨て山に倅に背負われていくのだが、この情景が美しいというか感動的なのだ。思わず涙腺が緩んでしまったほどだ。
おりんばあさんはたぶん60を超えたぐらいの歳ではなかったか。歯が丈夫で自分で石で砕くのだ。
無口ながらの倅の行動、孫の動物的な行動など、当時の貧しい村の中で人間が生きていくために為さねばならないことを
宿命として受け入れるその愛しさというか倫理の美しさに感動するのである。もちろん生にしがみついて人間的にこの宿命を
逃れようとする老人もいるのである。しかしおりんはまるで祝祭劇の主人公のように山に横たわりたいと思うのだ。
 
特別養老ホームで認知症でひとから介助食を食べせてもらって、漫然と生きながらえている老人たちになんの幸福感が
あるのだろうか。僕が八〇歳を過ぎたらどのような姿で生きながらえているのだろうか。
人間があまりにも長生きするようになったツケを僕らはほんとうにどうしたらいいのだろうか?

by jinsei-detox | 2014-02-13 19:39 | 社会