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心身に溜まった世の中の嫌な毒をデトックスしましょう。


by jinsei-detox

プロローグ  挑戦するナイスガイ

人生的デドックス    プロローグ
  今までにいろんな人生論的含みを持つ書籍を目にしたことがあるが、そのなかで目につく言葉に「前向きな発想」「プラス思考」「感謝」などがある。ある年齢が来ると人生うまく展開していく機微にそういう思考が必要なことが実感されるのは確かなことである。もっともそう感じるのはこころに余裕がなければならないだろし、また自分の言動を常に振り返る習性を持ってないとそういった思考そのものの方向性を意識することもあるまい。
  このコラムはそういうことを少し意識して、こころが陽性に傾くような事象を語っていきたいと思う。もともと僕は天の邪鬼なところがあり、物事の陰影にこだわる嗜好もあったり、日陰の花が好きであったりするから単純に自分のこころの芽をお日様へと向かわせることができるかどうか…でもこのhpは健康的な生活を営むことをテーマとしている訳だし、僕とて根は明るいはずであり、健康生活を望まないわけもないわけだから、物事を陽気に眺めることを習慣づけたいと思っている。とはいえ街で目にする腹立たしいことなども、見ないふりもできず、口に出してしまいたい心情もあるだろう。それはそれで毒素のママ吐き出してしまおうと考えている。とにかく自分のこころに日々貯まっていく毒素を出していくつもり。
  もっとも気をつけたいのは自分だけのデトックスではなく読者の気持ちも陽性になるようにしなくてはね。


挑戦するナイスガイ
  すでにジムのリングでのスパーリングは4人目の新しいパートナーになっている。男は最後の気力を振り絞って、自らのスタミナの限界を超える動きの中にいた。汗が飛び散り、激しい男の息づかいを聞いているだけで、見ている者にも緊張を強いらせた。スポーツをやった者でなければわからないあの、極度の疲労が伝わってくる。3分のブザーが鳴り、男は今にも倒れそうになるのを我慢しセコンドが差し出すペットボトルの水を口に流し込み、バケツに吐き出す。
  男は163センチと小柄なサウスポーのボクサーだ。目指す階級はWBCのライトフライ級チャンピオンである。具志堅ジムの嘉陽宗嗣だ。
  ジムの中は男たちが黙々と練習に励んでいる。実に久しぶりに男たちを見たという感慨にふけった。昔、プロ野球の選手の練習や相撲取りの稽古をも見たことあるが、むんむんと醸し出すあの一種独特の匂いに懐かしさを感じた。
  ボクシングはまさに闘争本能そのものの象徴的姿である。やってみた人間はわかるけど、3分間相手と戦うというのは本当に長いものだ。(殴り合いの喧嘩だって3分なんてやれない)ヘッドギアを付けてはいるというもののよくまああの強烈なパンチを食らったりして、どうにかならないものだ。
  むかし、子どもの頃母親が、テレビでボクシングの実況放送を見ていると、ボクシングだけはなにがあってもやってくれるなと真剣な顔をして僕に言ったことがある。母親だったら我が子が殴られるのは見るに耐えられないという。確かにボクシングをやって脳にダメージを受けてしまった男もたくさんいる。
  とはいえボクシングには男の夢がある。その夢を熱く描いてくれたのは、なんといってもボクシングマンガの金字塔である「明日のジョー」だった。映画だってジョン・ボイドの「チャンプ」シルヴェスタ・スタローンの「ロッキー」やロバート・デニーロの「レイジング・ブル」それと最近では「ミリオンダラーベイビー」(これは見ていない)がヒットした。
  「どんなもんじゃい!」亀田弘毅ではないが、男だったら吐いてみたいセリフをチャンピオンになったら映画やマンガの世界ではなく現実に吐いてみたい気持ちはよくわかる。
  ところでボクシングといえば最近、亀田3兄弟の言動が世間から注目を浴びるようになっているが、私も最初の頃はやんちゃな彼らの言動に微笑ましいものがあるように思っていたが、2度目以降の試合とその前後の彼ら親子のパフォーマンスはどうしてもいただけないと思うようになった。あれはオヤジの品格の無さがすべてを台無しにしているのだ。
  勝負は一瞬の運、そのことを熟知しているものならば、下品な自分を貶めるような言動は取れようもないはずである。ましてリングのうえで下手な歌を歌うなんて恥ずかしい限りである。父親がそれをひっぱたいてやめさせるのが勝負を知るものの節度ではないか。
  それに比べ、嘉陽宗嗣君は違った。ひたむきな、しかも謙虚さが身に付いている男である。
彼とて少年時に背の低さを人から馬鹿にされたことから、喧嘩に強くなりたいとボクシングを習い始めたという。ふつうの男の子の心情である。
  私と話していても、照れ性の彼の笑顔がとてもいい。
「プロになって思ったことは、プロはやるかやられるかの世界です。アマチュは負けても、また明日があるからです」世界に挑戦するからには絶対負けられない。「やるだけのことはやったので悔いはないという気持ちでリングに上がります」
 亀田3兄弟についてどう思うかと訊くと
「人は人。僕は練習を後悔がないくらいやってます。リングの上ではなにも考えずに戦えると思います」笑うと本当にあどけない少年の目だ。
  10月9日、ワンディ・シンワチャーとの試合が世界挑戦への一歩であり、チャンピオン奪回の戦いになるのである。
  世界へ躍り出る男の厳しい練習に耐える姿が、私の中の闘争本能を刺激した。私も彼に負けず、やらないとな…そんな風に自然と想いがわき上がってくる。
  「凄いですね。いいものを見せてもらったなあ」取材の若いカメラマンもしきりに帰り道、
感動したのだろう何度もそう呟いていた。
by jinsei-detox | 2006-09-11 16:16