心身に溜まった世の中の嫌な毒をデトックスしましょう。


by jinsei-detox

泣く女


  朝やや遅めの通勤電車で若い女性が文庫本を読んでいた。女は真っ赤な目をしてしきりに鼻をグシュングシュンさせハンカチで鼻水を拭いていた。
  本を読んで泣いているのだ。きっと泣ける小説に違いない。
  僕も以前、電車の中で小説を読んでいて、危うく涙がこぼれそうになったことがある。人前でいい歳の男が小説を読んで泣いている図なんて、あほらしくてというよりも絵にならない。僕は慌てて頭の中をエロモード、あるいは政治モードに切り返したりして、その危機を乗り越えたことがある。
  あれは確か浅田次郎の「壬生義士伝」だった。多くの人が感動したであろうあの物語は確かに泣かせる話だった。父と子の心情に思わず目頭が熱くなり、作家の浅田次郎を忌々しいやつだと恨んだことがる。僕は彼が作家として登場してからのファンであり、かなり昔にインタビューもしたこともある。そんなうちうちの楽屋を知っている男の書く物語に不覚にも涙腺を緩ませてしまったことに、改めて浅田次郎の筆力のすごさを知ったものだ。(映画の「壬生義士伝」は泣く用意をして席に座ったが、肩すかしを食わされてしまい泣けなかった)
  女の隣の席に座っていたおじさんが怪訝な面持ちで女を見ては彼女の文庫本を覗き込もうとしている。僕も女がなにを読んでいるのか知りたかった。恋愛小説だろうか?気になって仕方ない。
  それにしても感動して涙を流すのは気持ちのいい行為であるにちがいない。泣いてるときはなんだか自分がいい人になった気持ちがするからね。ヒューマンなこころが泣かせるわけだから。
  昔、中学生の息子と映画の「オペラ座の怪人」を見たことがある。息子が怪人が女を思う気持ちに同情したのかハンカチを出して目頭を拭いているのに気づいた。息子も男の気持ちがわかるようになったんだなあという感慨もあったが、それよりも彼はあまり情緒的な人間ではないと常日頃思っていたので、ビックリしたというより、へエーッという感じで安心した記憶がある。
  僕なんぞは歳をとって涙もろくなったのか、映画館に入れば必ずと言っていいほど目頭が熱くなるシーンにぶつかるのである。(歳をとるとなんで涙もろくなるのだろう?)でもときどき映画館の中がすすり泣きの合唱みたいになるときがあるけど、あれはちょっといただけない。だってそういう映画は泣かせようという演出が見え見えの映画なんだから。そんなものに泣いてたまるかだよ。
  それにしても泣くって言う行為は体にいい。泣いた後の爽快感がこころに広がる時間は得難いものがある。ストレス発散の貴重な時間でもある。
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by jinsei-detox | 2006-09-14 12:57